AutoCAD Plusって何なの?
業種別ツールセットが付いたAutoCADの上位版のことです。
AutoCAD Plusは、通称「AutoCAD including specialized toolsets」と呼ばれています。
AutoCADには、以下の3種類のバージョンがあります。
- AutCAD LT(2021年8月より販売停止)
- AutoCAD(レギュラー版)
- AutoCAD Plus
Plus > レギュラー版 > LT の順で性能が高いです。
※レギュラー版とは「通常」という意味で、3種類の中で一番標準的な機能が備わっています。
- 機能の違い
- 価格の違い
- AutoCAD Plusの具体的な機能
- Plusに乗り換えたときの費用対効果
- どのバージョンのCADを買うべきか
本記事では、私が実際に業務で使用した「AutoCAD Plus」の機能を例に、生産性が向上するかを解説します。
この記事を読むことで、自分に一番合うAutoCADのバージョンを知り、業務の効率化を実現できます。
実際にCADの機能に触りつつ、本記事を読んでみてほしいです。
どのバージョンを購入するかべきか?
解説の前に、「どのバージョンを買うべきか」を表にまとめました。
自分の状況に該当する表を見て、どのバージョンを購入するべきか検討してみてください。
AutoCAD未経験の方
種類 | おすすめ度 | 理由 |
---|---|---|
LT (販売停止) | 2021年8月より販売終了のため | |
レギュラー版 | 価格も安く、2D,3D,LISPが使えるため | |
Plus | 未経験の方には過剰な機能の可能性あり |
未経験の方の新規購入はレギュラー版がおすすめです。
すでに会社の方にPlusがあるなら、Plusの機能を勉強しましょう。
AutoCAD使用経験ありの方
現在の使用CAD | 乗り換えCAD | おすすめ度 | 理由 |
---|---|---|---|
LT (販売停止) | レギュラー版 | 同じ価格だが、3D、LISPが使えるため | |
Plus | 過剰な機能の可能性あり | ||
レギュラー版 | レギュラー版 | 現状維持えるため | |
Plus | さらなる業務効率化が期待できるため | ||
Plus | レギュラー版 | 価格は安いが、機能が減り作業効率が低下 | |
Plus | 現状維持 |
すでにPlusを使用してたら、安いからと言って安易にレギュラー版にするのはおすすめしません。
価格が安くなってもレギュラー版にしたことで使えなくなる機能が増え、余分な作業時間が増えます。
以上の表から自分に合ったAutoCADのバージョンを選んでね。
さらに詳しいバージョンの違いは、次の項目を読んでください。
AutoCAD Plusの機能の違い
AutoCADの機能の違いは、大きく分けて以下のようになってます。
2D | 3D | LISP | 業種別ツールセット | |
---|---|---|---|---|
LT | ○ | × | × | × |
レギュラー版 | ○ | ○ | ○ | × |
Plus | ○ | ○ | ○ | ○ |
※LTは2021年8月より販売終了
LTは販売終了してるから、今は、レギュラー版とPlusの2種類なのね。
レギュラー版とPlusの違いは「業種別ツールセット」の有無です。
AutoCADは、現在サブスクリプション方式を採用しており、1ヶ月、1年、3年毎に料金を払って、CADを使用することができます。
継続して更新する場合は、新規購入の価格より10%程度安い価格でCADを使用することができます。
バージョン別の新規購入価格と更新価格を次の表にまとめました。
新規購入価格と更新価格
新規購入価格
1ヶ月 | 1年 | 3年 | |
---|---|---|---|
LT (販売停止) | 8,800円 | 71,500円 | 203,500円 |
レギュラー版 | 8,800円 | 71,500円 | 203,500円 |
Plus | 28,600円 | 231,000円 | 658,900円 |
更新価格
1ヶ月 | 1年 | 3年 | |
---|---|---|---|
LT (販売停止) | 8,000円 | 64,900円 | 184,800円 |
レギュラー版 | 8,000円 | 64,900円 | 184,800円 |
Plus | 25,900円 | 209,000円 | 596,200円 |
※LTは2021年8月より販売終了だが、更新は可能
1ヶ月、1年、3年毎に契約できるAutoCADですが、長い契約であるほど価格が割引されます。
割引価格の比較を表にしたので参考にしてください。
1ヶ月契約と1年契約を比較
1ヶ月契約 x 1ヶ月 | 1ヶ月契約 x 12ヶ月 | 1年契約(新規) | 1年契約(更新) | |
---|---|---|---|---|
レギュラー版 | 8,800円 | 96,800円 | 71,500円 | 64,900円 |
Plus | 28,600円 | 313,500円 | 231,000円 | 209,000円 |
※2ヶ月目以降は、更新価格10%割引で計算
上記表より、1年契約で購入した方が1ヶ月契約x12ヶ月より以下の価格分お得です。
- レギュラー版の場合、31,900円お得
- Plusの場合、104,500円お得
1年契約と3年契約を比較
1年契約 x 1年 | 1年契約 x 3年 | 3年契約(新規) | 3年契約(更新) | |
---|---|---|---|---|
レギュラー版 | 71,500円 | 201,300円 | 203,500円 | 184,800円 |
Plus | 231,000円 | 649,000円 | 658,900円 | 596,200円 |
※2年目以降は、更新価格10%割引で計算
上記表より、1年契約x3年で購入した方が3年契約(新規)で、購入した方が1万円程度お得です。
しかし、1年契約x3年と3年契約(更新)と比べてみると以下の価格分3年契約(更新)の方がお得です
- レギュラー版の場合、16,500円お得
- Plusの場合、52,800円お得
以上から契約年数が長いほど価格がお得になります。
更新期間が短いと更新作業のサイクルが早く手間なので、3年か最低でも1年契約にした方が賢明です。
これは1ライセンスの価格の話だから10人分だとどうなるんだろ?
Plusの3年契約を10人分で計算してみると3年契約の方が1年契約よりも52,800円お得なので
52,800円 x 10人分 = 528,000円で、約50万円以上もお得になります。
契約期間が長いとライセンスの数だけドンドンお得になるのね。
更新作業も3年毎に来てくれた方が、手間が省けて楽ですね。
LTからレギュラー版に乗り換える
LTからレギュラー版には、乗り換えた方がいい?
絶対にレギュラー版に乗り換えるべきです。
LTと価格が同じなのに、レギュラー版は「2D」に加え「3D」「LISP」の機能も使えるからです。
※社員の能力アップや効率化の面から見ても絶対に乗り換えるべきです。
価格が同じなら、機能が優れている方を選ぶのは当然よね。
レギュラー版からPlusに乗り換える
レギュラー版からPlusに乗り換えた方がいいの?
Plusに乗り換えて本当に効率化できるか考えてみましょう。
レギュラー版の3年契約(新規)は、203,500円なのに対し、Plusは、658,900円と3倍近い価格です。
機能の違いは、「業種別ツールセット」が有無なので、これを使ったときの費用対効果がレギュラー版を上回れば、Plusを契約する価値があります。
次の章でPlus使用時の効果をまとめたから参考にしましょう。
業種別ツールセットとは?
「電気」「機械」「建築」など、各分野の設計作業を効率化する機能が備わったツール群のことです。
AutoCAD Plusには、各業界別に以下のツールセットが含まれています。
ツールセットタイプ | 使用業界 |
---|---|
Architecture ツールセット | 建築系 |
Mechanical ツールセット | 機械系 |
Electrical ツールセット | 電気系 |
Map 3D ツールセット | GIS マッピング ソフトウェア |
Plant 3D ツールセット | Plant 3D ツールセット |
Raster Design ツールセット | ラスターデザイン |
MEP ツールセット | MEP(機械、電気、給排水衛生設備) |
私は、油圧装置の設計で10年以上「Mechanical」を使用していました。
その中で、業務が劇的に効率化した以下の機能を例に、レギュラー版との生産性の違いを比較していきます。
- 隠線処理の自動化
- パワーディメンションで自動寸法配置
- 取付穴自動作図
- 十字中心線一括入力
- 多種多様な下書き線
- 70万点以上のブロックを使用可能
- ブロックから各面から見た絵が作成できる
隠線処理の自動化
コマンド「2D隠線処理」で隠線処理の作業を一瞬で完了できます。
- 前景と背景を選ぶと重なり部を自動で隠線処理
- ブロック同士でもできる
- 手直しするときに隠線処理前の状態に戻せる
- 隠線処理部を破線にもできる
隠線処理だけではなく、修正も楽になるので、隠線処理関係のすべての作業が大幅に時短できます。
隠線処理のなしは、ひとつづつトリムするので膨大な時間が掛かりますが、隠線処理ありは、前景と背景を選ぶだけで、すぐに作業が完了します。
え!?じゃあ、トリムしまくって隠線処理する必要がなくなるのね!
トリムの作業が多いほど、2D隠線処理で大幅に時短が可能です。
パワーディメンションで自動寸法配置
コマンド「パワーディメンション」で寸法入力が簡単にできます。
- 図形から最適の位置に寸法が自動で配置
- 寸法同士の間隔を自動で調整
- 寸法公差を簡単に入力可能
※寸法同士の間隔は「文字高さ X 2倍」となっています。
パワーディメンジョンなしの場合(レギュラー版)、寸法位置は、適当に配置するしかないので
- 配置するのに時間が掛かる
- 見た目の汚い図面になる
「パワーディメンション」は、尺度から自動で間隔を計算し配置するので、寸法入力が大幅に時短できます。
自動で寸法を配置するから、寸法入力に集中できるわね。
綺麗に配置するから、完成した図面も綺麗で見やすいです。
取付穴自動作図
取付穴自動作図は、四角の図形の四隅に穴を自動作成し、プレートを簡単に作成できます。
コマンドを使用し、以下の要素を入力することで、図形に穴を作成します。
- 取付穴の直径
- 四角の端からの穴の距離
こういうフタの部品図とか描いたりするわね。
このように、設計を効率化する機能が多くあります。
十字中心線一括入力
十字中心線一括入力は、複数の円の中心線を自動で作成してくれます。
メリットは、以下のようになります。
- どれだけ円があっても、一括で中心線を入力
- 円以外を選択しても、円だけに中心線を入力
円以外を選んでも、円だけ中心線が作成できるのは良いね。
適当に範囲を囲うだけだから、作業が大幅に時短可能です。
作図が楽になる下書き線の数々
コマンド「下書き線」で、様々な種類の下書き線を引くことができます。
レギュラー版にも「XLINE」という下書き線コマンドがあり、それの上位版となります。
以下のような下書き線を引けます。
- X軸方向
- Y軸方向
- Z軸方向
- 1/2 距離指定平行
- 線に垂直な下書き線
- 円に接する下書き線
上記以外にもいろんな種類の下書き線を引けます。
また、下書き線は以下のような機能があります。
- 下書き線をロック
- 下書き線だけを削除
- 図形選択で下書き線を自動作成
下書き線をたくさん作っても、一括で削除できて便利ね。
下書き線をロックして、図形だけ削除など作業効率も上がります。
70万点以上のブロックを使用可能
機械設計で使用するブロックが70万点以上も「Mecanical」には用意されています。
- ISOやJISなどの規格に対応
- 平面、正面、側面の各面も用意
- ダイナミックブロックのため、長さなど変更可
70万点もブロックがあれば、探す手間と作る手間が省けるわね。
ただ少し重いから使うブロックをツールパレットに登録しましょう。
ブロックの各面の図が自動作成できる
前の項目で紹介した70万点以上のブロックには、「パワービュー」という機能があります。
上画像のように正面のブロックから側面、平面など各面に対応した図を配置することが可能です。
三角法で各面の図がいるから、自動で出てくるのは助かります。
隠線処理と寸法配置だけで購入の価値あり
今回、AutoCAD Plusの機能を7個紹介しました。
特に下記の機能は、作業効率が劇的に良くなります。
- 2D隠線処理
- パワーディメンジョン(自動寸法配置)
この機能だけで設計時間が1日単位で変わります。
Plusはレギュラー版にの3倍の価格はするものの、この機能だけで設計費用が軽く回収できるほどです。
時間もだけど、作業者が無駄な作業をしないから疲労度も違うわね。
肉体的、心理的負担も減るから、数値以上に効果があります。
下記よりAutoCAD Plus体験版ダウンロードできます。
まとめ
「AutoCAD Plus」の価格や機能の違いについて、紹介しました。
- どのバージョンを購入するべきか
- 「AutoCAD Plus」の価格の違い
- 「AutoCAD Plus」の機能の違い
- 契約が長いほど、割引が効いて価格が安い
- LTからレギュラー版は絶対に乗り換えるべき
- レギュラー版からPlusは、よく検討する
- 業種別ツールセットの機能と生産性を紹介
コメント